名簿に行こう
「ケータイで動画を観られる環境を作っていきたいという想いがあるからです。
動画市場で極端にホットな会社は数社程度しかありませんし、ベンチャー企業も多いですよね。
システムに500~1000万円もかかってしまうとなると、それだけでビジネスがなくなってしまいます。
ジグムービーは『今ないからとりあえず出してみよう』という発想でやってきました。
会社で決裁の必要なく購入できるのは、大体この位の価格かなというのも根拠ですかね(笑)」佐藤氏が「畑の様子など、自作の映像を公開している個人の方から、ハリウッド映画の版権元まで、すべて一律で20万7900円です!」というように、動画をエンコードするためのPCが1台、動画を配信するためのサーバーが1台あれば、誰でもすぐに動画コンテンツ・プロバイダーになれるのだ。
プレイヤーをカスタマイズするような場合は、別途料金が必要なこともあるが、勝手サイトでも気軽に動画配信サービスを始められるのは、大きなメリットである。
手軽さはソフトの操作性などにも受け継がれているようだ。
「機能も最初から全部を公開しているわけではなく、『裏機能』もたくさん用意しています。
最初からたくさんのことができると、搭載されている機能を全部使って、複雑なものを作ってしまいがちです。
まずは『純粋に動画を作って公開する』というところからスタートできるようにしています」(佐藤氏)確かに、エンコーダーは「簡易設定モード」であれば、非常にシンプル。
スライダーを動かし、ボタンを押すだけで、ケータイ用の動画が一丁上がりだ。
結果として、「地方のゴルフショップの店長さんが、スイングを撮影して、富裕層の顧客に向けて配信している事例があります。
顧客は年配の方が多いようですが、動画を見るだけでしたら、どの年代でも大丈夫ですから」(佐藤氏)というように、コンテンツ・プロバイダー以外への広がりも見せている。
それとは対照的ではあるが、キャリアもジグムービーの技術に注目。
同技術が採用されたコンテンツがある。
ソフトバンクが、公式コンテンツを盛り上げるための施策として展開している「タダ歌ばん」「タダゲーム」がそれだ。
タダ歌ばん、タダゲームは、動画による独自の番組。
この動画配信に「S!番組プレイヤー」として、ジグムービーが使われているのだ。
もちろん、大手コンテンツ・プロバイダーの多くもジグムービーを採用しており、映画を丸ごと一本配信したり、有名アーティストのライブをストリーミングで配信したりと、今までのケータイ動画配信ではありえなかったコンテンツが、続々と登場してきている。
「1本1本手売りしていき、口コミで広まれば市場ができていきます」という佐藤氏だが、その言葉どおり、動画市場はかつての状況から、大きく変わろうとしている。
動画を見るだけでなく、そこから別のコンテンツや、コマースサイトへつないで購入を促進する、プロモーションムービー的な動きも、以前より積極的になった。
佐藤氏は「動画からゲーム、コミックに広がって、最終的に大きな輪としてつながるようにしていきたい」というが、すでに、ジグムービーを中心とした輪は、じわじわとユーザーにも浸透している。
自社でも、動画市場の広がりを支援する動きを展開中だ。
「ジグムービーであれば勝手サイトでも簡単に始められますが、そうすると困るのが集客です。
『見たいユーザー』と『見せたいコンテンツ・プロバイダー』をつなぐために、ジグムービーの右下の『jig』ボタンを押すと、ジグムービーを採用している事業者を紹介しているページに飛ぶことができます」(佐藤氏)ジグムービーの採用率がさらに上がれば、「将来的に紹介サイトに広告を入れることもあるかもしれない」(佐藤氏)というが、現状では、無償でコンテンツ・プロバイダー、ユーザーの双方に提供されている。
盛り上がっているように見える動画市場ではあるが、動画単体で収益を上げるビジネスは、「まだ王道と呼べるようなものがない」(佐藤氏)という。
iモードで動画コンテンツのカテゴリーが登場してから、まだ1年もたたないので無理もない話だ。
とはいえ、今後の可能性に期待できる動きもある。
100万人を超える会員を獲得した、コンテンツ・プロバイダーも存在するのだ。
フロントメディアの展開する「クリック・TV」である。
1年かからずに100万人の視聴者を集めた驚異の動画サイトクリック・TVが、勝手サイトとしてオープンしたのは、2006年4月30日のこと。
5か月後には会員数は30万人を突破し、開始から1年半たった現在、100万人を超える盛況ぶりを見せている。
多くの会員を短期間で獲得できた最大の理由は、同社が番組を無料で提供していることにある。
クリック・TVがオープンした当時は、動画といっても、キャリアの仕様に沿った、短いムービーが中心。
さらに、著作権がはっきりした映像は大抵が有料で、オリジナル番組にいたっては、ほぼ皆無という状況であった。
同社は、クリック・TV開設時のリリースで「世界初、ユーザー参加型携帯向け完全無料放送局が開局」とうたっているが、そこには、フロントメディアの代表取締役社長、I氏の目標が凝縮されているようにも見える。
「フロントメディアという社名には、『メディアを開拓していきたい』という想いが込められています。
ケータイを、新聞、テレビ、ラジオ、雑誌、インターネットに次ぐ『6番目のメディア』にしていきたい。
そこまでやるのが、我々の仕事だと考えています」(I氏)メディアを標模するだけあり、同サイトの番組は本格的だ。
無料ながら、ニュース、音楽、映画、アニメといったさまざまなジャンルの番組を、配信している。
2007年9月に公開された映画『ヱヴアンゲリヲン新劇場版‥序』のプロモーションとして、テレビ版の『新世紀エヴァンゲリオン』を5話無料で配信するなど、内容も豪華で、PC用の動画配信サイトに匹敵する充実ぶりだ。
また、同サイトではフロントメディアが独自で収録、編集した番組も公開しており、自社に撮影用スタジオまで用意している。
独自で番組制作を行うようになったきっかけは、ケータイ動画に対する周囲の理解のなさもあったようだ。
「ある会議で、権利元の方に『こんな小さな画面でうちの映像を見せるつもりなのか』といわれたことがあります。
ケータイで見たいというニーズはあるのに、作り手側がケータイで見られるとは思っていない。
だったら『長時間配信できる独自のケータイ動画を自分たちで作っていこう』と考えたのが、そもそものきっかけです」(I氏)画面が小さいケータイ向けだからといって、手抜きは一切なし。
試行錯誤を繰り返し、「どのような番組がケータイに向いているのか」といったノウハウも、蓄積されたという。
「例えば、ケータイ向けの情報番組の場合、パーソナリティは2人以下で、常に寄りの映像が中心というように、大画面向けのテレビ番組とは作り方も変わってきます。
画面が小さいからこそ、一人称でユーザーに呼びかけるという手法も重要で、テレビのようにタレント同士が話すようなスタイルはダメなのです」(I氏)結果として、このような試みがユーザーにも受け入れられていることは、データからも読み取れる。
フロントメディアの調査によると、1日20分以上視聴するユーザーが、会貞数増加とともに増えているのだ。
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